解禁といってもボジョレーでも松葉蟹でもない。 世田谷区奥沢の家の写真が公開出来る様になった。
この現場は1月に工事をした物件で、海水魚の水槽ではない。
この家の主が渓流遊びが好きで山女を飼いたいということを友人から紹介された設計士からの依頼で引き受けたが渓流魚ゆえに水温が15度から20度くらいになる。
普通に考えると結露してしまうので、何処に設置するのかと聞くとリビングのアイランドキッチンにすると言う? レストランかと聞くと住宅だという? 理解できない打合せの末に完成した家?
が新建築に掲載されました。
リビングの真ん中にあるアイランドキッチンの土台が水槽で側板もアクリルで40mmにして透けて見えるのがいい? アートは理解できないのか?考え方が古いのか取りあえず床に結露させないようにペア構造の水槽を作り、冷却能力を強化した1.5馬力用のチタンスパイラルチラータンクをつけた1馬力のクーラーで床に15cm落としこんでの設置になるので、濾過層は地下室につくりスタイロフォームで断熱し木箱の内側にもスタイロフォームを貼り付けてポンプの防音をした。
家の引渡し後はまだ見ていなかったのでどんな家に仕上がるのか楽しみであった。
ところで水槽は何処から見るの?と聞くと外から見るとの返事? フィックスの1枚ガラスの向こうは舗道になっていてそこから見ると言う主。 外から見るとちょうど目線が渓流を眺めるみたいになるそんな水槽見たこと無いねんけどと思いながら一番寒い冬の夜に水槽に側板40mmのアクリルを接着し、あまりにも接着具合がよくないので、急遽補強に三角のアクリル板を工場から送ってもらった。
このために1泊延泊したがこんな作品になるとは想像もつかなかった。 工事中のリビングにすえつけた水槽を見た主は想像を超えた水槽の出来栄えです、正直感動しましたと試運転中の殺風景な水槽を見て褒め称えてくれました。
ペア構造の水槽とは水槽の中に水槽がある、今回は1800Wx600Dx780H外寸に8mmのアクリル水槽で20mmの空間を空けて13mmの水槽を中に納めて空間を密閉しました。低水温の水槽で結露してはいけない場所にはこのような水槽を提案する。 かに道楽の松葉ガニの生簀はこのような作りになっています。
このような水槽はアクリルの接合面が水が入った時と入ってない時に屈折が変わるので見え方が変わってしまうのが難点になる。その為、工房で小さなペア水槽の模型を作り照明を当てて写真を撮り写り込みの検証もした。
山女はB-BOXの渓流魚コーナーから分けてもらいついでにシポラックスを1ヶ月ほど漬け込んでバクテリアの種付けもお願いした。
水槽の据え付けられた家は設計者と依頼主との意思の疎通がなければ良い出来栄えにならない、家は住まいであるが作品でもある。
今回も、自分の受け持つパートでは良い作品に仕上がったと自負しても良いだろう。
奥沢の家はアート作品『B面がA面にかわるとき/長坂 常』(著者:長坂常 編集:株式会社大和プレス)として近日出版されます。
その続編として、広島で近代アートとネイチャーアートのコラボレートした作品を6月に製作にかかります。ゴールデンウィークが明けてからアートの勉強にイタリアに旅しようと思います。